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「寄り合い」と未来の民主主義

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民主主義は日本になじまない?

「民主主義は西洋から来たものだから、日本にはなじまない」と言う人がいます。たしかに議会や選挙などのしくみは明治維新後に西洋の真似をしてつくられたものですし、憲法で「国民主権」が定められたのも戦後になってから。日本の民主主義は「借り物」だというのも、一理あるかもしれません。

では、昔の日本ではものごとをどうやって決めていたのでしょうか。もしかしたら、将軍や天皇のような「偉い人」が独断でものごとを決めていたイメージがあるかもしれません。しかし実は日本でも昔から、民主主義的にものごとを決める「寄り合い」というものが各地域で行われていました。

日本の村々にあった「寄り合い民主主義」

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忘れられた日本人

民俗学者・宮本常一さんの『忘れられた日本人』という本に「寄り合い」についての記述があります。対馬の伊奈という村で興味深い古文書に出会った宮本さんが、「この古文書をしばらく拝借ねがいまいか」と頼んだところ、村人たちは、貸してよいかどうかを寄合で延々と話し合いはじめました。この村では、何か取り決めを行なう場合には寄合を開き、全員が納得するまで昼夜問わず何日でも話し合って決めるというのです。

対馬

対馬

この「寄り合い」の特徴は、全員が対等な立場であることと、全会一致が原則であること。理詰めで議論するのではなく、「そういえば昔、こんなことがあったらしい」などと、村人それぞれが自分の体験や見聞などに事寄せて話すため、時間はかかるものの、皆が腹の底から納得して決められるのだそうです。「すくなくも京都、大阪から西の村々には、こうした村寄りあいが古くからおこなわれて来ており、そういう会合では郷土も百姓も区別はなかったようである。」と宮本さんは書いています。

土地に根ざした自治の伝統

数十年前まで日本のあちこちで行われていただろう、こうした「寄り合い」は、未来の民主主義を考える上で多くの手がかりを与えてくれるように思えます。

1つは、「自分たちの村のことは自分たちで決める」という、地域の自治・自立の意識です。日本史の授業では、将軍や天皇が日本を支配していたように習いますが、実は江戸時代まで日本列島の津々浦々で暮らす人々にとっては、将軍や天皇など顔も知らない遠い存在。「日本人」という意識すらなかったはずで、彼らのアイデンティティは「対馬の伊奈村の人」であり、人は自分が暮らす「村」という生態系の一部でした。

また、こうした寄り合いを可能にしていた地域コミュニティのあり方も重要です。村の規模が大きすぎず、村人同士に信頼関係がなければ、このような決め方はできないでしょう。村の暮らしは皆の助けあいで成り立っていますから、納得しない人の反対を押し切って何かを強引に決めても、結局はしこりが残ってマイナスが大きい。物事を効率よく「決める」ことより、村人同士の「つながり」を保つことを大切にしているわけです。そのつながりのベースには、山の神や氏神など同じ神様に守られ、ともに祭りをおこなってきたことからくる、目に見えない世界とのつながりもあったはずです。日本では、個人の集まりからなる「市民社会」をベースにした西洋風の民主主義とは違う、もっと土着的な直接民主主義の伝統があったのです。おそらくアメリカ先住民など、大地に根ざして生きてきた世界各地の村々で、同じような営みが行われてきたことでしょう。

未来の民主主義へ

ひるがえって現代の私たちの社会を見ると、「政治」は私たちの日常からかけ離れたものになっています。広告代理店が政党の広報戦略を担い、イメージ戦略ばかりで政策の議論は盛り上がらない。地域コミュニティは崩壊し、私たちは選挙の時に限られた選択肢から商品を選ぶように投票するだけ。議会で多数派となった政党は、多数決の原則を盾にとって、何をやってもいいのだと開き直る。そこにあるのは、民主主義とは似て非なる大衆動員のシステムです。

しかし特に311後は、そのような大衆動員システムに疑問を感じる人も増えています。また近年は若い世代の地元志向が強まり、地域の自治・自立の大切さが再び言われるようになっており、「全員で時間をかけて話しあう」という直接民主制の原則もSNSの登場などで新たな可能性が生まれています。

地域に根ざして持続可能な暮らしを送りながら、自分たちの未来を全員で納得して決める。そんな「寄り合い民主主義」の伝統が、もしかしたら新しい形でよみがえってくる可能性もあるかもしれません。地域で、あるいはネットを介して、未来の民主主義をじっくり生み育てていきたいものです。

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