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核を手放せない国はわれわれを巻き込むな!広がる「非核の傘」とノーベル平和賞

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小さなデモクラシーな動きが世界中で連携。平和への大波を起こした2017年。

今年7月、国連で「核兵器禁止条約」が採択されました。この条約は、核兵器の使用や威嚇などを禁止し、核兵器を非合法化することで「核のない地球」をめざす画期的なアプローチが、国際的に高く評価されています。その功をたたえ、この条約の締結をめざしてロビー活動などを進めてきた核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)がノーベル平和賞を受賞しました。

ICANは世界的なキャンペーンの連合体で、10年前に結成された若者中心の組織です。日本のNGOも参加しており、ピースボートの川崎哲さんが共同代表をつとめています。これらの動きには、長年、原爆の悲惨さを伝え、核兵器廃絶を訴えてきた日本の被爆者たちも大きな役割を果たしました。

ICANのロゴ

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「これまでのやり方では核はなくせない」と、122もの国が本気で動いた

「核兵器禁止条約」がつくられたのは、これまでの核軍縮や核廃絶のやり方ではラチがあかなかったからです。

世界には今、およそ15000発の核兵器があります。この核兵器の廃絶をめざす国際社会の枠組みとして、1970年に結ばれた核不拡散条約(NPT)というものがあります。世界190カ国が加盟するこの条約では、核兵器の拡散を防ぐ一方で、米国・中国・ロシア・イギリス・フランスという核兵器国に「誠実な核軍縮交渉」を義務付けています。

でも、NPTができて40年以上になりますが、核兵器国が核を捨てる気配はありません。特に21世紀になってから核軍縮は停滞し、米ソ(ロ)は核兵器のハイテク化・高性能化を進めてきました。さらに、条約に加わっていないイスラエルやインド、パキスタンの核保有を黙認。インドに対しては、米国や日本は核技術を輸出しようとしています

そんな状況をみて、核廃絶をめざしてきた一部の非核兵器国やICANに参加する各国のNGOは、「核兵器国との合意を待っていたのでは核廃絶はできない、とりあえず核兵器国抜きで、核兵器を非合法化する『核兵器禁止条約』を結ぼう」、と動き始めました。そして米国など核兵器国の強い反対に遭いながらも、2017年7月の国連総会で採決され、122カ国の賛成で締結にこぎつけたのです。5つの核保有国はじめ、その「核の傘」の下にいる日本やドイツ、韓国、オーストラリアなどは不参加でした。

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「核のない地球へ」舵を切った世界に、日本の被爆者が果たした大きな役割

この核兵器禁止条約は、これまで安全保障の問題として議論されてきた核兵器を、人道的な視点からとらえています。その背景には、広島・長崎の悲惨な経験が広く世界に知られたことがありました。広島・長崎の原爆資料館には、海外から年間数十万人が来訪。さらに、ICANやピースボートなどのアレンジで、被爆者が国連はじめ世界各地で証言を重ねました。

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広島・長崎では平和学習も盛ん

被爆者の平均年齢は81歳。彼らにとって、海外に行き、地獄のような原爆投下直後の記憶を思い出して語るのは、肉体的にも精神的にもつらいことです。それでも、「もう二度と私たちのような思いをする人を出したくない」という思いから、メッセージを発し続けました。

ノーベル平和賞を受賞したICANの事務局長ベアトリス・フィンさんも、長崎の被爆者・谷口稜曄さんのスピーチを聞いて衝撃を受けたそうです。日本では被曝体験や戦争体験の風化が言われますが、ICANの中心メンバーである20代〜30代の若者達は日本の被爆者の体験談から力を得て、この画期的な条約を成立させました。

これまで、毒ガスや生物兵器、対人地雷、クラスター爆弾などが「非人道的」だとして非合法化されてきました。これらより格段に多くの人を無差別に殺傷する核兵器も、ついに国際法で違法とされるようになったわけです。

なぜか条約に反対する、日本政府の本心は?

日本は世界唯一の戦争被爆国として長年、核廃絶を訴えてきましたが、この条約の制定交渉開始に反対し、採択にも参加しませんでした。政府は、核廃絶は核兵器保有国と非保有国の協力によって進めるべきもので、この条約は逆に亀裂を深めてしまうと言っています。

しかし現実には、NPT成立から40年以上の間、多くの非保有国や市民が求めても、核兵器保有国が非保有国と協力して核廃絶を進めることはなかったわけで、だからこそ新しい条約がつくられたのです。日本政府の姿勢には、広島・長崎の被爆者団体や多くの市民団体が批判の声をあげ、条約への参加を強く求めています。

政府の本音は、米国の「核の傘」の下にいるのに核兵器を非合法化する条約には参加できない、ということかもしれません。たしかに日本はこれまで、「核の傘」の下にいれば核攻撃されるのが怖くて誰も攻撃してこないという「核抑止力」に頼ってきました。しかし冷戦が終わって久しい今、本当に「核抑止力」に効果があるのかはわかりません。だとすれば、「核の傘」の下にいながら、一方で核兵器禁止条約に参加し、北朝鮮も含めた世界中の核兵器の廃絶をめざしていく道もあるはずです。

核兵器禁止条約締結に大きな役割を果たしたカナダ在住の被爆者・サーロー節子さん(85)は、日本政府について「唯一の被爆国として反核運動の先頭に立つと言いながら、実際は何もやっていない」と厳しく批判しています。かつて講演で「核兵器使用は違憲とは思わない」と発言したこともある安倍首相が、本気で「核廃絶」をめざす気があるのか、条約に参加しないなら他にどのような妙案があるのかが問われています。

すでに南半球は「非核の傘」の下に。どうする北半球?

いま世界には、実際に「核の傘」ならぬ「非核の傘」が広がり始めています。地域内で核兵器の使用や保持のほか、核保有国からの攻撃や威嚇も禁止する「非核兵器地帯」条約を結ぶ動きが広がっており、すでに南半球のほとんどがカバーされています。「『核による平和』を言うなら、自分たちを巻き込まずに核保有国同士だけでやってくれ」というわけです。

「核兵器禁止条約」は、こうした「非核の傘」を世界中に広げることで核廃絶をめざす取り組みともいえるでしょう。ここ東アジアでも、「核の傘」でなく、「非核の傘」によって自国と地域の安全を守るという、発想の転換が求められています。

世界の非核兵器地帯(青)と、核兵器国(赤)

世界の非核兵器地帯(青)と 核兵器国(赤)

これまで、安全保障の「専門家」たちは、現実世界で平和を守るのはパワーバランス(力の均衡)だと言ってきました。核抑止論もNPT体制も、同じ発想から生まれています。しかし、こうした「力による平和」が軍需産業を発展させ、軍需産業の繁栄のために各国の軍備が増え続けたり、各地の紛争が兵器を「消費」する絶好の機会になったりする問題を生んできたのです。

核兵器禁止条約や非核兵器地帯は、こうした「力による平和」ではない、非武装化・非軍事化による平和づくりという世界の新たな潮流の表れと見ることができます。それは、日本の平和憲法のコンセプトにも通じるものです。

北朝鮮の核について、冷静に現実的に考えてみる

いま、北朝鮮の核兵器が問題になっています。安倍首相は、米国とともに北朝鮮に「異次元の圧力をかける」と言っていますが、それで国民の命を守れる展望があるのでしょうか。というのも、日本が76年前、米国から石油を止められて追い詰められ、無謀な対米戦争を始めたように、北朝鮮を追い詰めすぎると、逆に自暴自棄になってしまう可能性があるからです。

米国の「核の傘」の下にいることも、追い詰められた北朝鮮に通用する保証はありません。まして米国が先制攻撃をした場合、日本国内の米軍基地にミサイルで反撃してくるかもしれず、そうすればうつぶせになって頭を抱えたところで無意味でしょう。

つまり、私たち日本国民の命を守るには、「とにかく戦争しない」ことしかなさそうです。そういう意味では、核兵器を持たず、憲法で戦争を禁じられていることは、見方を変えれば大きなメリットではないでしょうか。この特別なポジションを活用し、北朝鮮に核を持たなくても安全が守られると確信させる具体策を打てれば、日本への「脅威」は大きく軽減されていくでしょう。

実は日本を含む北東アジアでも「非核兵器地帯」の提案がなされています。北朝鮮に核兵器を放棄させ、日本と朝鮮半島に一切核兵器を置かず、そのかわりに周辺の核兵器国(米・中・ロ)は日本と朝鮮半島に核兵器を使用したり威嚇したりしない、と約束するという案です。情勢をみながら、こうした提案を日本が主導して具体化させていき、さらに非核三原則(核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず)を法制化したり、核兵器禁止条約に参加したりしていくことが、日本の現実的な安全保障の道を切り開いていくのではないでしょうか。

ノーベル賞、あなたの町も受賞してるかも?

ノーベル平和賞を受賞したICANには、日本の「平和首長会議」も参加しています。平和首長会議には全国の市区町村の98%が加入しており、実はあなたの町の首長もノーベル平和賞を受賞している可能性が高いのです(加盟都市リストはこちら)。

もし、あなたの住む市区町村が平和首長会議に参加していたら、市区町村長あてにお祝いと激励、そして日本も核兵器禁止条約に加わるよう声を上げてほしいと求めるメッセージを送りましょう(そのようなよびかけをしている団体もあります)。そして多くの人に、日本が核兵器禁止条約に参加していない問題を伝えていきましょう。被爆国・日本がこの条約に参加し、その上で同盟国や周辺国に本気で核廃絶を働きかけていくことができれば、人類が本当に核なき世界を実現する大きなきっかけになることでしょう。

核兵器は必要悪ではなく、絶対悪です。

(被爆者・サーロー節子さん ノーベル平和賞授賞式スピーチより)

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